それでも……私は自分から命を捨てることはできなかった。ある意味では意地で、彼ら家族や自分の境遇に対するささやかな反抗だったのかもしれない。これではただ、苦しい思いをするために生きて来たようなものだったから。

 いつか、ほんの少しでも幸せになることで見返してやりたかった。こんな運命を私に押し付けたこの世界を……――。



「――ソエル、ザド。よくやった……。これも優秀なお前たちが発明した魔導具のお陰だ。その企画を局に持ち込んだことで、国のお偉方にも我々の存在を大きく売り込むことができた。今は一般の局員にしか過ぎない儂が重要なポストに就く日も近いことだろう……。ふたりとも、わかっておるな? 将来お前たちがその地位を継ぎ、さらにファークラーテン家を発展させるのだぞ!」
「「はい!」」

 父の激励に兄たちは自信満々の姿で答え――ひとりぼんやりしていた私は、半ば反射で次の言葉を予想し、体を小さくする。父が威圧するように私の前に立ち、上から睨み付けた。

「それに比べてサンジュ、貴様は本当に使いようのない愚図だな。聞けば、兄ふたりの魔導具店で指導されておりながら醜態ばかりを晒し、足を大いに引っ張っておるというではないか。恥を知れっ!」
「……も、申し訳ございません」