私にだって、言葉に込められた感情くらいは読み取れる。この人は私に向けてこれ以上なく誠実に、本気で語りかけてくれているではないか。そんな人が向けてくれた期待を裏切ったりしたくない。

 ――恐怖から自分を守るためではなく、この人が正しいことを言っているのだと信じ、証明するために。

「私……頑張ってみます。自分の役割を見つけられるように。ですから……」

 そこまでが限界で、尻すぼみになり私の口は閉ざされた。でも、そんな私の意思を、ディクリド様はちゃんと汲んでくれたようだ。

「ああ、これからも見守っている。……では、またな」

 それだけ答え、こちらの肩を掴んで力付けると、ディクリド様はお城の中へと消えていった。フィトロさんも軽く手を振ってそれに続き……私はその場に取り残される。

「ったく、ずいぶん待たせてくれちゃってさ」

 呆けていた私の手をリラフェン嬢が強引に引っ張ってゆく。彼女は大股で人の間をどんどこ抜けると、私をどこかへ連れてゆく。