ブルルルルッ――。

「……分かっている、そう急かすな」

 愛馬に起きろと鼻づらで頭を叩かれ、木の根元で体を丸めていたディクリドは、浅い眠りから目覚めた。
 夢の中でサンジュの声を聞けた気がして、気分は悪くない。

(……朝か。戦の状況を知るためにも……早く戻らなければな)

 夏ももう大分近いが、さすがに陽射しの当たらぬ森の中では少々肌寒い。馬の腹を枕にして冷えを凌いでいたディクリドは、疲労困憊の身体を無理に持ち上げると、体を起こした。



 あれから――。

 強敵だったマルディール王国の総指揮官ファルガーを打ち倒し、フィトロの助けを受けて敵軍本隊の包囲網を辛くも突破した後も、追撃を躱すためにディクリドの部隊は無我夢中で疾駆した。