しかし、それもまたよくなかったのかも知れない。年齢が進むにすれ、私の魔導工学(魔導具を研究する学問)の成績は、兄たちに追いつき上回り始めてしまった。

 それが気に入らなかったか、家庭教師から兄たちより褒められたというそれだけで、ある夜家族は私を全員で非難した。
上の兄は私を「末娘ごときが、何を出しゃばる必要がある」と冷たく突き放し、下の兄は拳で私の頬を張れ上がるほど強かに打った。そして母は、ドレスが破れて血が滲むほど、鞭で背中を叩き折檻した。

「お前の方が私の子より優秀などとっ……。ああ忌々しい、私への当てつけ!? お前など死ねっ! 死んでしまえばいいっ!」

 鞭を受けて蹲る私を、父はにやにやと笑って見ているだけ。そして、周りの誰もその凶行を止めてはくれなかった。

 背中はひどく腫れ上がり、一月ほども仰向けで眠ることはできなかったが、それよりも……家族すべてが、私を疎んじているという事実が強く胸に突き刺さり、心に深い傷を付けた。生まれてはいけない人間だったのだと、気付かされた。

 以来……私は、決して家族達に逆らわないよう、息を潜めるようにして毎日を過ごしている。身に着けた知識の片鱗すら出さぬよう知恵足らずを装い、絶えず微笑みを貼りつかせ、まるで臣下の様に家族を褒めたたえた。そんなことをしても、私を見る彼らの視線が和らぐことはついぞなかったけれど。