今から遡ること百年以上の大昔、ある偉大な魔術師がこの世には存在したという。
いや、その人物は魔術師と言えたのかどうか……。とにかく彼又は彼女は、いかなるものであろうと、目にした魔術を記号の形に置き換えることができた。
最初はそれを、誰も意味の分からないただの記号としてしか見ず、利用法を見出せなかった。ただ書き起こすだけではそれはなんの効果も発揮せず、魔術として再現できなかったからだ。しかし、その人物は、それがなにかの役に立つと信じて疑わず、世界を旅し、貪欲にもありとあらゆる魔術を目にして、その能力で記号化していった。
そして同時に、世の中にある物質のうち、魔術と相性のよいものがいくつかあることに気付いたその人物は、ありとあらゆる方法で、自分の見出した記号による魔術の再現を試みたのだ。
それはその人物の短い人生の中で一度だけ成功し、国はその人物の功績を讃えて死後もその技術を受け継ぎ、王国内に新たな専門部署を作成して研究を続けていくことにした。そうしてそれは数年後に実を結び、魔術を再現することのできる道具――魔導具が世に誕生することになったのである。
いや、その人物は魔術師と言えたのかどうか……。とにかく彼又は彼女は、いかなるものであろうと、目にした魔術を記号の形に置き換えることができた。
最初はそれを、誰も意味の分からないただの記号としてしか見ず、利用法を見出せなかった。ただ書き起こすだけではそれはなんの効果も発揮せず、魔術として再現できなかったからだ。しかし、その人物は、それがなにかの役に立つと信じて疑わず、世界を旅し、貪欲にもありとあらゆる魔術を目にして、その能力で記号化していった。
そして同時に、世の中にある物質のうち、魔術と相性のよいものがいくつかあることに気付いたその人物は、ありとあらゆる方法で、自分の見出した記号による魔術の再現を試みたのだ。
それはその人物の短い人生の中で一度だけ成功し、国はその人物の功績を讃えて死後もその技術を受け継ぎ、王国内に新たな専門部署を作成して研究を続けていくことにした。そうしてそれは数年後に実を結び、魔術を再現することのできる道具――魔導具が世に誕生することになったのである。