でも、たったひとつ――これでもうこの世に戻り、辛い思いをすることはない……その事実だけが確かな希望だったのに。
そうまでしても、命を断つことはできなかった。裏切られたのだ――これまでは一切姿を表すことのなかった、幸運というやつに。
「う、ううう……う――――――っ!」
私は泣き喚きながら、今居る部屋を見渡す。
高級な家具が並んだその部屋には私物はおかれていない。どこかの宿か、屋敷の一室か。でも、そんなことはどうだっていい。私の命を終わらせてくれるものは、何かないか――。
ハッとして、私はテーブルの上に立ててあった一本の万年筆を掴み上げた。
その先は、まるで針のごとく鋭く、無機質な光を灯している。
(これで思いっきり喉笛を突けば……すべてを終わらせられる――)
私にはその光が、一筋の希望に見えた。あの家に戻りたくなければ、今ここでやるしかない。私は黒い軸を両手で握ると、鏡の前に移動し、自分の喉に向かって正確に狙いを定めた。
そうまでしても、命を断つことはできなかった。裏切られたのだ――これまでは一切姿を表すことのなかった、幸運というやつに。
「う、ううう……う――――――っ!」
私は泣き喚きながら、今居る部屋を見渡す。
高級な家具が並んだその部屋には私物はおかれていない。どこかの宿か、屋敷の一室か。でも、そんなことはどうだっていい。私の命を終わらせてくれるものは、何かないか――。
ハッとして、私はテーブルの上に立ててあった一本の万年筆を掴み上げた。
その先は、まるで針のごとく鋭く、無機質な光を灯している。
(これで思いっきり喉笛を突けば……すべてを終わらせられる――)
私にはその光が、一筋の希望に見えた。あの家に戻りたくなければ、今ここでやるしかない。私は黒い軸を両手で握ると、鏡の前に移動し、自分の喉に向かって正確に狙いを定めた。