――ハーメルシーズ辺境伯家。
ノルシェーリア王国の西端部を司るこの広大な領地がいかにして生まれたか。
それは、隣国のマルディール王国との戦史に、深く関わっている。この大陸が生まれ、村や街を経て国というものが発生し、そしてそれらが土地というものの重要さを把握して以降。丁度ふたつの王国から等しい距離に置かれていたこの地は、双方の国から幾度となく奪い合われることになった。
それが繰り返されるたび、両国とも国の威信をかけて領地を守り、あるいは取り戻そうとする。そうなれば、国境付近の領地の戦力は肥大化し、ここが突破されれば次は我が身だと、周りの領地も次々に戦への協力を表明するか、恭順を申し出て陣容に加わった。
そんな風にしてハーメルシーズ領は、王国で三本の指に入る巨大領地へと変貌してゆき、今では、完全にノルシェーリアの領地として認められて三百年以上が経つ。そうなった現在でも、領地を奪われたことへの恨みか、はたまた肥沃な土地を手にし、国家資源をより充実させたいという腹か……隣国からの侵攻は止むことはない。
今から二十八年前のこと……。そんな厳しい土地にひとりの少年が生まれた。
ディクリド・ハーメルシーズ。そう名付けられたその少年は黒い髪に金色の瞳を持った、他より少しばかり大きな赤子として生まれたそうだ。
ノルシェーリア王国の西端部を司るこの広大な領地がいかにして生まれたか。
それは、隣国のマルディール王国との戦史に、深く関わっている。この大陸が生まれ、村や街を経て国というものが発生し、そしてそれらが土地というものの重要さを把握して以降。丁度ふたつの王国から等しい距離に置かれていたこの地は、双方の国から幾度となく奪い合われることになった。
それが繰り返されるたび、両国とも国の威信をかけて領地を守り、あるいは取り戻そうとする。そうなれば、国境付近の領地の戦力は肥大化し、ここが突破されれば次は我が身だと、周りの領地も次々に戦への協力を表明するか、恭順を申し出て陣容に加わった。
そんな風にしてハーメルシーズ領は、王国で三本の指に入る巨大領地へと変貌してゆき、今では、完全にノルシェーリアの領地として認められて三百年以上が経つ。そうなった現在でも、領地を奪われたことへの恨みか、はたまた肥沃な土地を手にし、国家資源をより充実させたいという腹か……隣国からの侵攻は止むことはない。
今から二十八年前のこと……。そんな厳しい土地にひとりの少年が生まれた。
ディクリド・ハーメルシーズ。そう名付けられたその少年は黒い髪に金色の瞳を持った、他より少しばかり大きな赤子として生まれたそうだ。