日によっては、ちらほらと降り落つ“真白”な雪が人々の目を空に誘う時節。
 魔導具店“辺境伯の御用達”が開店して二カ月。私たちはここで、新しい年を迎えることになった。

 最近は客足も安定して落ち着き、このファルメルの街の人たちだけでなく、遠方から噂を聞きつけて出向いてきた人たちが目立つようになった。より多くの人の力になれるのが嬉しく、私たちは身を粉にして働く日々を送っている。

 新しい商品のお披露目もいくつか。

 ふたつで一対の魔導具で……片方を起動させれば警告音(アラーム)が走り、発信された魔力を受け取れる位置ならもう片方に映る人物と会話することのできる“映身(はえみ)のミラー”。
 それから、胸元に設置した、ダイヤルを模した魔石を捻ることで、長時間温かい状態を保つことができる肩掛け、“温守(ぬくも)りケープ”。

 他にも、体に巻いた者の体重を風のように軽くしてくれる“軽身(かるみ)のマント”や、魔石の溶液をコーティングした硝子盤の上に、専用のペンで魔力による光の文字や絵を描ける、“光魔導スクリーン”など……どちらも売れ行きは好調だ。