ちゅぷちゅぷと……室内に果実を貪るような淫猥(いんわい)な音が響いている。

「ん……ザド様ぁ。もう……一度」
「だらしない顔をしやがって。そんなに欲しいか?」
「ザド様、こちらにも……」

 情熱的なキスを繰り返しながら、ひとりの男と複数の女が体を絡ませている。
 ここは王都にあるファークラーテン伯爵家の屋敷の一室。次男であるザドの私室だ。
 彼は今非常に気分がよい。それは側に侍るこの女たちのせいではなく……。

 サンジュがいなくなっている間にも、ファークラーテン伯爵家には大きな動きがあった。
 父が魔導具局に務めている傍ら……領主業の兼任が難しいということで、代行として、兄のソエルが、新しくファークラーテンの名を授かった領地へと赴いた。そのおかげで、彼が経営していた魔導具店もザドに譲渡され、潤沢な財政状況の下、ザドは日々遊興に耽ることができている。

 唯一の懸念としては、サンジュがいなくなった穴が予想以上に大きかったことだ。