ベラさんにお話を聞いた後も、私は新たな情報を求めて城の中を巡ったが……あまり重要な内容を知ることはできなかった。

 そもそも、あの頃の私にとっては、同僚とコミュニケーションを取るのが精一杯で、男性使用人となると、単なる日常会話くらいしかしたことがない。もちろん、地味な容姿の私に彼らから声がかかるなどということもなかったせいで、知り合と呼べる男性などは、ひと握りしかいなかった。まともに話したことがあるのは、指折り数えるのが悲しくなるほどの人数しかいない。

「――おっ、サンジュじゃねぇか。お前さん、元気にしてたか?」

 その中のひとりである、ドンホリさんが後ろから声を掛けてくれた時、これはもはや天啓だと飛びついた。

「お、お久しぶりです!」
「おうよ。おめぇさん、街で店を開いたとか聞いてるぜ。ずいぶん繁盛してるっていうじゃねぇの」
「そ、それほどでは……」

 相変わらず横に大きい体付きのおじさんは、ニマニマしながら近付くと、私の身体を肘で突く真似をする。このひょうきんで噂好きのおじさんなら、もしかしたらフィトロさんになにが起きたのかを詳しく知っているかもしれない……!

「あの……! 実は、折り入ってお尋ねしたいことがありまして」