翌日、お店を休んで私はハーメルシーズ城行きの馬車に乗っていた。

 リラフェンの落ち込みの原因がどうしようもなく気になったため、買い物に出てくると偽って、ふたりの間になにが起きたのかよく知る人物をそこで探そうと思ったのだ……。
 車窓の外に拡がる景色を眺めつつ以前、彼女から聞いた、フィトロさんと兄弟の契りを交わした当時の話を思い出す……。



 戦争で敵国に家族を奪われ、受け入れ先もなく……同じような境遇であちこちから集まってきた子供たちと一緒に暮らしてゆくことになったふたり。しかし、集まった子供たちも、病や事故、食糧やお金を巡っての大人たちとの争いなどで、ひとり、またひとりと姿を消していった。

 最後には片手の指ほどの数しか残らず、そこで一番年長だったフィトロさんがリラフェンを含む他の子供たちと約束をしたのだそうだ。自分たちを苦しめる勝手な大人なんて頼らずに、ここに居る全員を家族として、助け合いながら生き抜こう。そしていつか揃ってまともな暮らしをできるようになろうと……。

 ハーメルシーズ領の片隅の街の路地裏に廃材で拠点を作り、身を寄せ合って眠りながら、街で仕事を探して必死に小銭を稼ぐ子供たち。厳しく大変な毎日だったろう。でも戻ればそこには同じ境遇の仲間が待っている……そんな貧しくも温かい生活は、しかし数か月と持たなかった。