同日夜……王都ペルティネのある夜会場から、ふたりの男が街へと歩き出す。

 ひとりは艶めく青髪を後ろで一房だけ伸ばした貴公子。そしてもうひとりは黒髪を無造作に伸ばした、しっかりとした体格の男性。後者は端正な顔立ちながらもどこか野性的な魅力を備えている。

「……それでディクリド様、どうでした? あなたのお眼鏡にかなうご婦人はいらっしゃいましたか?」
「……いればこんな顔をしていないが」

 傍目には貴公子の方が供として、大柄な男性を連れているようにも見えなくもない……。しかし、実際は逆であった。
 黒髪の男性こそが、この貴公子の忠誠を受ける、遠方の大領地の主――ディクリド・ハーメルシーズという人物なのだ。

 彼は吐き捨てるように言った。

「どいつもこいつも、俺の身分にしか関心がないからか……上っ面のおべっかばかりを並べ立てるばかりだったな。そんな者が俺の隣に立って苦労を分かち、共に領地を盛り立てて行ってくれるとはとても思えん」
「いつもながら手厳しい。彼女は彼女たちなりに、着飾ることや社交辞令に心血を注いでいるのです。その努力を認めないようでは、女性たちがあまりにもかわいそうではありませんか?」