まったく最初はお客が来なかった魔導具店“辺境伯の御用達”も、みちがえるように繁盛するようになり……少しずつハーメルシーズ領の外からも魔導具を買い求める人が現れだした頃の、久しぶりの休日。

　この間の嵐が尾を引いているのか、今日も外は雨。
　私は時折窓の外のそれを眺めながら、一階の作業部屋でこつこつと魔道具作りを続けていた。静かな雨の音は耳障りがよく、作業も中々捗って、今日はそこそこで切り上げようかと思ったところ、ドアベルが鳴ってリラフェンの帰還を知らせる。

　彼女はハーメルシーズ城に、魔導具店の経営状況について報告に行ってくれていた。私は残念ながら魔導具製造が忙しくて抜けられなかったが、今月の予想よりも大幅に良好な売上を聞いてもらえれば、ディクリド様と、なによりリラフェンを目に入れても痛くないほどかわいがっているフィトロさんにちゃんとは安心してもらえたはずだ。

　店舗にかかる税金もここハーメルシーズ領ではさほど多くもないし、生活に困らないほどの利益が得られた分は、リラフェンと相談しつつ今後の投資……例えば新規で人を雇ったりとか、魔導具の研究資金、より質のいい魔導具を安価で卸すことなどに費やし、なるべくこの領地に住まう人たちに還元していければと考えている。

　リラフェンがばっちり笑顔で戻って来る様を想像し、一緒に喜ぶ準備をしながら玄関に向かった私は、そこで予定外の事態に出くわした。