「ですがね兄上、サンジュはファークラーテン家の者だ。もうすぐ嫁ぐとはいえ、これからもこちらの家の発展には力を尽くしてもらわないと困る。でしょう?」
「無論だ。定期的にグローバス家にはこちらから出向くことになるだろう。それまでに有用な魔導具を開発し、完成し次第私に報告しろ。これからも私欲は忘れ、当家のためにだけ励むがよい」

 冷徹な長兄の言葉が、壁をずるずると滑りへたり込んだ私をさらに突き離した。

 搾取……搾取……搾取……。
 この人たちの中では、私から奪い取ることは当然のことなのだ……。意思なき道具として、どんなひどい扱いをも甘んじて受け入れろと、そう諭してくる。

「ふ、ふ、ふ……」

 なんにもおかしいことはないのに、私は断続的に微かな笑いが口から漏れ出すのを止められない。心が壊れかけているのが自分でも分かる。

「ははは、頭のねじが外れちまったか? 哀れな妹よ」
「放っておけ。大分下らぬ時間を過ごした……行くぞ」