引っ越し作業が片を付いた後、急ピッチで私は魔導具の製造作業を進めていく。

 ハーメルシーズ城でも、お城にあった魔導具の修繕はしたが、ほぼほぼが動力源となる魔石の入れ替え作業だけだったので、こうして本格的に工具を握るのは久々だ。

 私は本当にこれらを振るえるのか。空いた数か月で、私の技術はすべて忘れ去られているのではないだろうか。
 一階の作業部屋に入り、色々な疑念を持ちながら右手に(のみ)、左手に槌を握ると、工具たちはすんなり私の手に馴染んだ。

 ――どうやら、いけそうだ。

 木箱に山積みとなった術式盤を手に取って、机に設置。

 幸い、何百という魔術を発動するため術文(魔術記号の組み合わせ)は、実家での長い生活の中で完全に記憶している。
 それらは思い返すまでもなく、作るべき魔導具に合わせて私の頭の中に浮かんできた。

 魔石の溶液が沁み込んでやや紫がかった輝きを放つ銀板の上に、寸分の狂いも無いよう魔術記号を打刻してゆく。
 鑿は数種類あり、ものによって打てる溝の形が違う。あるものは花びら、あるものは光の玉や流るる風、すぼまった(みお)のようにそれぞれが独特だ。