悄然と肩を落とし、私は半ば自動的にそう答えて、のろのろと立ち上がると父に背中を押され、執務室を追いやられた。
 もうなにも考えたくなくて、ふらふらと廊下を歩く私の耳に、かすかな失笑が届く。

「プクク、よかったなぁサンジュ。お前みたいなのでも嫁の貰い手があってさぁ」

 ふらりと私が顔を上げると、廊下にふたりの兄が立っていた。もしかして私が部屋から出てくるのをわざわざ待ち受けていたのだろうか?

「…………」

 立ち止まったまま私が反応できずにいると、先程の言葉を掛けた次兄、ザドが近付いて来て私の首に腕を回した。

「いやぁ、俺らもさすがに父上の権力欲には驚いちまったなぁ。まさか妻の子じゃないとはいえ、血の繋がった実の娘を自分より年上のおいぼれに売り渡しちまうなんて……! くはは、不憫すぎて腹がよじれちまうぜ! こんなにも若い女がよお」

 ザドが父親の前では見せない荒っぽい態度で私に吐き捨てた。乱暴な言葉遣いは屋敷の外でよくない人間との付き合いがある証拠だ。父の血を継いだのか好色で、下働きの女にも手を出しているという彼は、私の身体にべたべたと遠慮なく触れてくる。