ファルメルの街にはほどなく着いた。
馬車から降りると、ディクリド様は私を連れて街中をゆく。すると当たり前のように彼をよく知る街の住民たちで、たちまち周りに人垣ができる。
「領主様、おはようございます!」
「ちょっと領主様! うっとこの娘が、こないだ孫を生んだんですよ! この玉のような顔を見てやってくださいな!」
「待ってましたぜ! こないだ立派な猪を仕留めたんで、ぜひこの毛皮を領主様に献上しようと思いましてね。城の方に送らせてもらいやすよ!」
ディクリド様は「ああ」とか「それはいいな」とか言葉少なに頷くだけだったが、それだけでもずいぶん街の人たちは喜んでいた。ずいぶんと慕われている様子だ。
あまり長引いても迷惑になると弁えているのか、街人たちは入れ代わり立ち代わり、挨拶をしてすぐ去っていく。私も周りの人に声を掛けられ、どうもどうもと頭を下げたが、よくあることなのか根掘り葉掘り何者だとは聞かれずに済んだ。
それでも大通りを歩く間、絶えずそんな住民たちの好奇の視線に晒されているとすっかり疲れてしまい――ようやく人が離れて一息ついた瞬間、ディクリド様は周りに誰もいないのを確認して、ぽつりとこぼす。
馬車から降りると、ディクリド様は私を連れて街中をゆく。すると当たり前のように彼をよく知る街の住民たちで、たちまち周りに人垣ができる。
「領主様、おはようございます!」
「ちょっと領主様! うっとこの娘が、こないだ孫を生んだんですよ! この玉のような顔を見てやってくださいな!」
「待ってましたぜ! こないだ立派な猪を仕留めたんで、ぜひこの毛皮を領主様に献上しようと思いましてね。城の方に送らせてもらいやすよ!」
ディクリド様は「ああ」とか「それはいいな」とか言葉少なに頷くだけだったが、それだけでもずいぶん街の人たちは喜んでいた。ずいぶんと慕われている様子だ。
あまり長引いても迷惑になると弁えているのか、街人たちは入れ代わり立ち代わり、挨拶をしてすぐ去っていく。私も周りの人に声を掛けられ、どうもどうもと頭を下げたが、よくあることなのか根掘り葉掘り何者だとは聞かれずに済んだ。
それでも大通りを歩く間、絶えずそんな住民たちの好奇の視線に晒されているとすっかり疲れてしまい――ようやく人が離れて一息ついた瞬間、ディクリド様は周りに誰もいないのを確認して、ぽつりとこぼす。