遥斗と出会ってから二度目の冬が来た。

 遥斗はもしかして、俺のことが好きかも?って思わせてくる時があった。例えば、話しながら顔をぐっと近くに寄せると顔を赤らめるところとか。

 遥斗がそうやって顔を赤らめる時は、どんな気持ちなんだろうって、しょっちゅう考えている。というか遥斗のことばかり考えていて、もやもやした気持ちになったりしている。

――俺はもう、遥斗のことが好きだ。

 いつものように、一緒に隣で夜食を食べている時、これはもしや本当に遥斗も俺のことが好き?と思わせてくる出来事があった。

 それは「白川のこと、下の名前で呼んでもいい?」と遥斗の顔を覗き込んで質問した時。

「い、いいよ。でも何で急に?」

 もっと心の距離が近づきたいからなんて、言えるはずもなく。

「なんとなく、かな? 俺のことも、莉久って呼んで?」
「菅田くんを名前で……頑張ってはみるけれど」

 俺の名前は、頑張らないと呼べないのか。

「そういえば、莉久、くんは、僕の下の名前、知ってるの?」

 早速名前で呼んでくれた。
 呼んでくれて、心がぎゅうっとなる。

「うん、知ってる。遥斗だろ」

 名前を呼ぶと遥斗は何回も小刻みに瞬きをし、肩をびくんと震わせた。

「なんか今、自分の名前を莉久くんに呼ばれたら、心がぎゅうっとなった」

 俺も、遥斗と同じように、心がぎゅうってなったよ。

「遥斗」

 もう一度名前を呼び、顔を近くに寄せてみると「わぁっ」と普段聞かない大きな声で遥斗は叫んだ。そして一気に顔が赤くなって、遥斗は両手で自分の顔を隠す。

 好きな人に名前を呼ばれて、照れている人にみえた。
 恋している反応のように思える。

 本当に脈ありな感じがした。
 本当に俺のことが好きだったらいいのに。

 ふと、遥斗の気持ちがどうなのか分かるようなことを試したくなった。

――実際遥斗は、俺をどう思っているのか。俺が遥斗に感じている気持ちと同じ気持ちが、遥斗にもあるのか。

***