第三章 不可思議

真美「いつ行くんですか」
咄嗟の電話での応対に、明日と答える。
真美「明日は用事があります」私は、また電話しますと答えた。
ニュースを見ると???が猛威を奮っている。すると。メールが飛び込んできた。
真美「友達が???が鎮火するまで待とうと言ってます」
私は強引に攻めなかった。承諾した。その後、1週間真美への連絡を断つ。その後、電話も応答に出ないLINEに既読もつかない。ここでも。強引に攻めない。会えなくても、友達に伝える事は出来る。そんな妙案までも浮かばない。現実にあの日から一ヶ月が経ったが、脈はあったんだ。私は心がもがき始める。ネガティブな行動がさらにネガティブな行動を引き起こす。
真美は、私が行動を起こさない事に意外性を感じていた。顔を合わせていた頃は普通に会話もコミュニケーションもしてる。LINEの世界では呟くだけだ。真美にはこの男の行動が理解できない。鏡の前に自分の顔を写してみると、額にはシワができる。それに、私の年齢を5歳も年下に見てる。
私は真美には最低の自分しか見せていない。15年前に倒れた時。真美も神経症を患ったと聞いた。いつか見た。真美の髪は滑らかでフワッとした感触がするが、病の後遺症か白髪がある。この15年間。私は陰性症状らしき症状と格闘しながら、仕事にも挑戦している。でも。正社員の座からは転げ落ちた落ちこぼれだ。そんな私は真美に出逢ってから本来のポジティブな性格に変化した。同じ、道は歩まないと決めた。目標は作家だ。二度目の挑戦のバレンタインデーに読まれる文学賞の発表が近づこうとしていた。
落選するとはわかりきっていた。真美は、症状が悪化していた。いつもより強迫性の動作が止まらない。このままじゃ作業所での永遠の生活。とても。自立なんて出来ない。私も妄想が悪化する。 そんな折。私は潜在意識と言う本を手にした。その隣に、ソウルメイトのあなたへと言うタイトル。初めて聞く言葉である。気になるのでスマホでキーワードを打つとヒットした。普通じゃない恋愛。読み進めていくと、普通じゃない恋愛のパターンがあるらしい。真美と出逢ったのは、2019年。そして、2020年の???ウイルスの予言。こんな出来事を見えない世界。スピリチュアルと言うらしい。真美との関係を振り返ると、タイミングやすれ違いが多い。そんなに変わったことはない。妙に気になる。精神疾患に襲われるのには意味があるのか。私は精神病。真美はどうも神経症。性格は似ている気がする。でも。年齢差がひっかかる。おやっと思うのは、すんなり、進展しない。真美は、少し。男性恐怖症があった、酷くはないが、強迫性の、症状。
夜、本の事が頭に残っていて寝付けないでいる。気晴らしに車に乗り、深夜のドライブに走る。15分程海岸を走っていると、突然、目の前にワゴン車が海から目の前に現れる。急ハンドルで回避した瞬間。その車の影も形も見当たらない。車を降りるが、車の気配も。それに海から車が割り込んでくるのも、おかしい。身震いがして帰宅へと急ぐ。信号機で止まっている車のプレートナンバーは、89-14見覚えのあるナンバー。真美のナンバーだ。
いつも通りに真美の作業所を通る。目ん玉を大きく開いて、ナンバーーに目をやると、そう89-14だ。昨日見たナンバーだ。それに、やたら。ゾロ目のナンバーが目につく。スピリチュアルを検索していたので。よりいっそう、見えない世界を疑ってしまう。あれから。皆んなと会話しても真美の情報は入ってこない。それより。未知との遭遇。私は幻を見たのだろうか。スマホを今日も、完全音信不通。あんなに出現していた夢の中の真美も消えた。やっぱり何もない関係なのか。
週末。気晴らしのドライブに出る。国道を10キロほど走る。一瞬視界に飛び込んできた車のナンバー。確かに。89ー14。車体は水色だ。偶然にしたら出来過ぎだ。この日は土曜日。日曜日も遭遇した。少し思考回路がおかしくなってきている。また、統合失調症に襲われているのか。翌日、精神科の外来に診察を受ける事に。先生は入院を進める。最近の真美とのエピソードを語るわけにはいかない。実家に電話すると。お金はなんとかなる、入院しろ。あっと言うまに入院手続きが行われた。
私は女性にはコントついていない。進展すると何故か、気持ちが暴走してしまい、気がついたら精神病院に4度ぶち込まれる。恋愛偏差値30の男は結婚偏差値は〇点だ。おまけに、5度目の入院は自らの意思でぶちこめられた。院内には、何も持ち込めない。スマホもない。雑誌もない、音楽もない。あるのは紙と鉛筆。不思議な事もない。サイキック能力は幻想の世界の出来事なのか。入院した当日に、悟った。入院してる場合じゃない。行動力。真美の愛車にぶちあたれ。任意入院だったから2週間で退院できた。気持ちは。強気だ。デイケアに今日は。バスで行く。真美の作業所の近くがバス停だ。このバス停の前を、遅刻する寸前に真美は通る。こないだ、見かけた時間は把握していた。実家から、30分。バス停に着くと、椅子に腰掛ける。前方に水色の車が見えた。私の前で。奇跡だ。車が止まった。
真美「昨日。見ましたよ。LINEに、バス停の前で待ってますと。今日は休みです。どっか行きますか」恋愛偏差値30の男が彼女を誘うのを成功させた。これから先が問題だ。
真美「本能寺の変は読みましたか」
私「本能寺の糞は見た」
その返事は真美の知的好奇心を欠いた発言。
2人きりなると落ち着いた。
真美「攻めないですね、攻めると堕ちますよ、今日は」
私「ホテルなんかはどうですか」
真美「いいけど。責任取れます」
私は。あっさりこの発言を取り消した」
真美「何処が恋愛偏差値30ですか、瑠美さんいるじゃないですか」
私「今度の小説のタイトル」
真美「私の結末は」
私は、返答に困った。その時閃いた。アファーメーションだ。
私「ハッピーエンドです」
真美は笑った。
私「とにかく真美さんに魔法をかけます」
真美は静かに微笑んで、私の言葉を待っていた。彼女の目には、わずかに不安が残っているが、それでもその瞳の奥には何か期待するような輝きがあった。
「魔法?」真美が軽く首をかしげた。
「そう、魔法だ。君が笑顔になれるような、小さな奇跡を起こしたいんだよ。」私は少し照れ臭く言葉を継ぐ。真美はその言葉に微かに反応したが、すぐに再び落ち着いた表情に戻った。「そんな魔法があったら、私の人生も少しは楽になるのかな」
「楽にするよ。だって、僕がいるじゃないか。」
彼女は少し戸惑った様子で視線を下げた。その瞬間、私は彼女が本当に自分の感情をどこかに隠していることに気づいた。彼女が持つ壁は厚く、それを超えるには時間が必要なのだと。
「本能寺の変とか歴史の話も面白いけどさ、真美、君自身のことをもっと知りたいんだ。」と私は言った。真美は少し考えた後、ようやく答えた。「私、昔からいろいろなことがあって…簡単に言えるようなことじゃないの。でも、もし本当に私に魔法をかけてくれるなら…もっと自由に生きられるようにしてくれる?」
私は真剣な眼差しで真美を見つめ、静かにうなずいた。「もちろんだよ。君が自由に、楽しく生きられるように、僕が一緒にその道を探す。」
それから私たちは、デイケアの駐車場を後にして、どこか穏やかな場所へ向かうことにした。何か大きな変化が起きる予感がしたが、それが何なのか、まだ誰にもわからなかった。ただ、少しだけ未来が明るく見えたのは確かだった。
「君に魔法をかけるよ、真美。そして、君の未来を明るくする。」