「にしても、美海はあいかわらず昔から朝弱いよなー」
この蒸し暑い中、波琉は前でのんきに口笛なんかを吹きながら自転車をこいでいる。
「寝る子は育つっていうからいいんだよ」
「そうか? だけど、美海、中学の時と比べてあんまり身長変わってなくない? 寝るだけじゃなくて、ちゃんと好き嫌いしないでバランスよく栄養もとらないと、いつまでたっても大きくなれないぞー」
おまけに私をからかってくるこの余裕っぷりだ。
「う、うるさいっ! それに余計なお世話だよっ」
昔からチビな私にとって、身長のことをとやかく言われるのは正直、癪でしかない。
「だいたい、波琉は私のこといつまでも子ども扱いしすぎ」
「でも、今朝の美海の寝顔は子どもみたいで可愛かったよ?」
「なっ……波琉のバカ!」
べしっ。
「いったあああ! 美海ひどいっ! 運転妨害だあー!」
「波琉が変なこと言うのが悪い……」
「そんなぁー!」
とはいえ、流石の波琉もこれでこりただろうし、今回は特別に許してあげることにした。
私達が通う汐瀬高校は、水ヶ島の中心部にある普通科の高校だ。
ぶっちゃけまぁ頭の悪い私でも入れるくらいだから、偏差値自体はそんなに高くはない。
それでも島の中心部に位置してるだけあって、交通の便とかショッピングモールみたいな商業施設はかなり整っている。
小さいながらゲームセンターとかもあったりして、放課後、寄り道するには最適な場所なのだ。
「ここまででいいよ、後は自分で歩いてく」
大通りに出る少し手前の赤信号で、私は波琉の自転車からおりた。この先の大通りを右に曲がるとすぐに私達の通う汐瀬高校は見える。
「えっ、なんで? 学校まで乗ってけばいいじゃん」
「いや、だって……」
「だって?」
「はぁ……波琉ってほんと鈍感だね」
呆れてため息をつく私に、波琉は両手を上げてなおさらわけがわからないという顔をする。
このまま行ったら、百パーセント注目の的になるって単純なことがなんでわからないんだろう。
テストはいつも高得点ばっかりとってるのに。
それに万が一、クラスの誰かに見られでもしたら絶対、ネタにされる。もしもそうなったら、私にとって一巻の終わりだ。
それだけはなんとしてでも避けたい。
「あれ、波琉くん? それに美海ちゃんも」
その時、なんともちょうどいいタイミングで助け舟が来た。
「あっ、陸じゃん、おっはー!」
波琉が陽気に手を振ったすぐ先には、波琉と同じくらい背が高くて知的そうな黒ふちメガネが特徴的な一人の男子生徒が立っていた。
「お、おはようございます、陸先輩」
「おはよう、二人とも」
大人っぽい笑顔が爽やかなこの人は陸先輩。
波琉のクラスメイトかつ一年生の時からの親友らしい。
「珍しいね、今日は電車じゃないんだ」
「美海がいつも以上に寝坊しちゃったから、俺が全力でチャリ飛ばしてきたんだ! あっ、もちろん、ちゃんと安全運転だぞ?」
「ちょっ、波琉……!」
その言い方だとまるで私が寝坊の常習犯みたいじゃんか……。
まぁ、実際そうだから否定もしないけど。
「はははは、あいかわず二人は本当に仲がいいね」
「す、すみません、陸先輩……」
陸先輩の前でやいのやいのと、まるで小学生みたいな言い合いをする私達。我に返ってみると、結構、恥ずかしくなってきて私はついと顔をうつむける。
「ううん、全然。むしろ見ていて羨ましくなってきちゃったよ」
「そりゃあ美海は俺の自慢の幼なじみだからな! いくら陸が相手でも、そう簡単には渡さないぞー?」
ぽんと不意打ちで肩に手を置かれて、一瞬、ドキッとする。
「まさか、そんなつもりで言ったんじゃあないよ。ただ僕は本当に、お似合いだなぁって思って」
ああ、もう! 陸先輩まで!
お似合いなんて言うから私はちょっと意識してしまった。
この蒸し暑い中、波琉は前でのんきに口笛なんかを吹きながら自転車をこいでいる。
「寝る子は育つっていうからいいんだよ」
「そうか? だけど、美海、中学の時と比べてあんまり身長変わってなくない? 寝るだけじゃなくて、ちゃんと好き嫌いしないでバランスよく栄養もとらないと、いつまでたっても大きくなれないぞー」
おまけに私をからかってくるこの余裕っぷりだ。
「う、うるさいっ! それに余計なお世話だよっ」
昔からチビな私にとって、身長のことをとやかく言われるのは正直、癪でしかない。
「だいたい、波琉は私のこといつまでも子ども扱いしすぎ」
「でも、今朝の美海の寝顔は子どもみたいで可愛かったよ?」
「なっ……波琉のバカ!」
べしっ。
「いったあああ! 美海ひどいっ! 運転妨害だあー!」
「波琉が変なこと言うのが悪い……」
「そんなぁー!」
とはいえ、流石の波琉もこれでこりただろうし、今回は特別に許してあげることにした。
私達が通う汐瀬高校は、水ヶ島の中心部にある普通科の高校だ。
ぶっちゃけまぁ頭の悪い私でも入れるくらいだから、偏差値自体はそんなに高くはない。
それでも島の中心部に位置してるだけあって、交通の便とかショッピングモールみたいな商業施設はかなり整っている。
小さいながらゲームセンターとかもあったりして、放課後、寄り道するには最適な場所なのだ。
「ここまででいいよ、後は自分で歩いてく」
大通りに出る少し手前の赤信号で、私は波琉の自転車からおりた。この先の大通りを右に曲がるとすぐに私達の通う汐瀬高校は見える。
「えっ、なんで? 学校まで乗ってけばいいじゃん」
「いや、だって……」
「だって?」
「はぁ……波琉ってほんと鈍感だね」
呆れてため息をつく私に、波琉は両手を上げてなおさらわけがわからないという顔をする。
このまま行ったら、百パーセント注目の的になるって単純なことがなんでわからないんだろう。
テストはいつも高得点ばっかりとってるのに。
それに万が一、クラスの誰かに見られでもしたら絶対、ネタにされる。もしもそうなったら、私にとって一巻の終わりだ。
それだけはなんとしてでも避けたい。
「あれ、波琉くん? それに美海ちゃんも」
その時、なんともちょうどいいタイミングで助け舟が来た。
「あっ、陸じゃん、おっはー!」
波琉が陽気に手を振ったすぐ先には、波琉と同じくらい背が高くて知的そうな黒ふちメガネが特徴的な一人の男子生徒が立っていた。
「お、おはようございます、陸先輩」
「おはよう、二人とも」
大人っぽい笑顔が爽やかなこの人は陸先輩。
波琉のクラスメイトかつ一年生の時からの親友らしい。
「珍しいね、今日は電車じゃないんだ」
「美海がいつも以上に寝坊しちゃったから、俺が全力でチャリ飛ばしてきたんだ! あっ、もちろん、ちゃんと安全運転だぞ?」
「ちょっ、波琉……!」
その言い方だとまるで私が寝坊の常習犯みたいじゃんか……。
まぁ、実際そうだから否定もしないけど。
「はははは、あいかわず二人は本当に仲がいいね」
「す、すみません、陸先輩……」
陸先輩の前でやいのやいのと、まるで小学生みたいな言い合いをする私達。我に返ってみると、結構、恥ずかしくなってきて私はついと顔をうつむける。
「ううん、全然。むしろ見ていて羨ましくなってきちゃったよ」
「そりゃあ美海は俺の自慢の幼なじみだからな! いくら陸が相手でも、そう簡単には渡さないぞー?」
ぽんと不意打ちで肩に手を置かれて、一瞬、ドキッとする。
「まさか、そんなつもりで言ったんじゃあないよ。ただ僕は本当に、お似合いだなぁって思って」
ああ、もう! 陸先輩まで!
お似合いなんて言うから私はちょっと意識してしまった。