「ご苦労さま」
「あっ!」

 困惑する私のすぐ後ろに、何食わぬ顔をした巫女が立っていた。

「どこに行ってたんですか!?」
「んーとね、ちょっとした野暮用? ができて」
「な、なんですか、野暮用って……」
「それは企業秘密かな。ともあれ”向こう”も済んだみたいだから、これからあなたを現世に送り返すね」

 急すぎる話の展開に、一瞬、頭がフリーズした。

「いやいや、待ってください! 波琉に会わせてくれるって話じゃなかったんですか!?」
「だから、もう会えるんだって。元の世界に戻れば」
「は、はい?」

 まったくもって理解が追いつかない。さっきから何を言っているんだこの人は。いくらなんでも話がてんでばらばらすぎる。
 
「本当に、何も覚えてないの?」
「覚えてるも何も……わかりません、私にはさっぱり」

 正直な私の答えに彼女はため息をつく。

「しょうがないなぁ、ついてきて」

 くるりと踵を返して、彼女は来た道と逆の方向へと突き進む。

 一体、彼女がどこへ向かおうとしているのか、私には謎でしかなかったけれど。