シャン! シャン! シャンシャン!
それはまるで、私の脳に直接語りかけてくるみたいだった。
暗いまどろみの向こうから鈴の音が聞こえてくる。
あ、あれ……。
わけもわからないまま私は一人、石段の上にぽつんと立ち尽くしていた。
今までに体感したことのないような不思議な感覚。けれど、夢にしてはなんだかやけにリアルだった。
もしかしてここって水ヶ島神社? えっ、でも、なんで……。
確か私は自分の部屋のベッドで寝ていたはず。
どうして自分がここにいるのか、わけがわからなくなって、あれこれ思考を巡らせている内に、またあの鈴の音が上の方から聞こえてきた。
シャン、シャン、シャンシャン!
不気味には思うものの、まるで淀みなく流れる水のような澄んだ音。
私は恐る恐る恐る音のする方向へ視点を動かす。
すると、そこには一人の髪の長い”巫女”がいて、彼女は鳥居を背に鈴を持って踊っていた。
空には青い満月が出ている。
昼間の霊海伝説の話が自ずと頭をよぎった。
まさか、本当だったの?
その瞬間、背筋がぞっとした。
けれど、その次に植えついた感情は恐怖ではなかった。
というのも怖いとかいう以前の問題に、私は目の前の光景が美しいと思った。
実際、巫女はかなりの美人だった。
凛とした目元に聡明そうな顔立ち。社殿に見え隠れした青い満月の光が、夜空になびくその艷やかな黒髪を照らしている。
その上、彼女のしなやかな立ち居振る舞いには寸分の狂いがなく、見ている人を惹きつける不思議な魅力があった。
一体、どれくらいの間、見とれていたのだろう。
彼女は突然、踊りをやめたかと思うとこっちを振り向いた。
な、何!?
ぎょっと心臓が縮む思いだった。
けれど、彼女は特に何をしてくるわけでもなかった。
ただ私に向かって、穏やかに微笑んだだけ。
そんな彼女の表情からはやわらかな優しい印象を受けた。
そのすぐ直後だった。
社殿に隠れていた青くまばゆい満月が全貌を現し、青の鳥居を照らし出す。
その瞬間、辺りが一帯が強烈な青白い光で包まれた。
「おいで」
うぇっ!? い、今、しゃべった?
目をすがめ、あっけにとられる私に向かって巫女が手招きしてくる。
そのわずか数秒後、私の返事を待つ間もなく彼女は鳥居の向こう側へと姿を消した。
き、消えた!?
一体、さっきから自分の身に何が起こっているのか、私はさっぱりわからず困惑するばかりだった。むしろ、この状況で落ち着いていられる方がよっぽどすごいと思う。
しかし、ずっとこの場に突っ立っているわけにもいかない。
行ってみよう、かな。
悩んだあげく、私は覚悟を決めた。
ゆっくりと一歩ずつ、鳥居に向かって歩き出す。
そうして鳥居の真ん前にたどり着いた時、まるで光の中に吸いこまれるようにして私の意識はそこでぷつりと途絶えた。
そういえば、あの巫女の人、前にどこかで見たことあるような気が……。
青いまるで海のような光の中、おぼろげな頭の中で、彼女の綺麗な横顔が何度もちらついた。
それはまるで、私の脳に直接語りかけてくるみたいだった。
暗いまどろみの向こうから鈴の音が聞こえてくる。
あ、あれ……。
わけもわからないまま私は一人、石段の上にぽつんと立ち尽くしていた。
今までに体感したことのないような不思議な感覚。けれど、夢にしてはなんだかやけにリアルだった。
もしかしてここって水ヶ島神社? えっ、でも、なんで……。
確か私は自分の部屋のベッドで寝ていたはず。
どうして自分がここにいるのか、わけがわからなくなって、あれこれ思考を巡らせている内に、またあの鈴の音が上の方から聞こえてきた。
シャン、シャン、シャンシャン!
不気味には思うものの、まるで淀みなく流れる水のような澄んだ音。
私は恐る恐る恐る音のする方向へ視点を動かす。
すると、そこには一人の髪の長い”巫女”がいて、彼女は鳥居を背に鈴を持って踊っていた。
空には青い満月が出ている。
昼間の霊海伝説の話が自ずと頭をよぎった。
まさか、本当だったの?
その瞬間、背筋がぞっとした。
けれど、その次に植えついた感情は恐怖ではなかった。
というのも怖いとかいう以前の問題に、私は目の前の光景が美しいと思った。
実際、巫女はかなりの美人だった。
凛とした目元に聡明そうな顔立ち。社殿に見え隠れした青い満月の光が、夜空になびくその艷やかな黒髪を照らしている。
その上、彼女のしなやかな立ち居振る舞いには寸分の狂いがなく、見ている人を惹きつける不思議な魅力があった。
一体、どれくらいの間、見とれていたのだろう。
彼女は突然、踊りをやめたかと思うとこっちを振り向いた。
な、何!?
ぎょっと心臓が縮む思いだった。
けれど、彼女は特に何をしてくるわけでもなかった。
ただ私に向かって、穏やかに微笑んだだけ。
そんな彼女の表情からはやわらかな優しい印象を受けた。
そのすぐ直後だった。
社殿に隠れていた青くまばゆい満月が全貌を現し、青の鳥居を照らし出す。
その瞬間、辺りが一帯が強烈な青白い光で包まれた。
「おいで」
うぇっ!? い、今、しゃべった?
目をすがめ、あっけにとられる私に向かって巫女が手招きしてくる。
そのわずか数秒後、私の返事を待つ間もなく彼女は鳥居の向こう側へと姿を消した。
き、消えた!?
一体、さっきから自分の身に何が起こっているのか、私はさっぱりわからず困惑するばかりだった。むしろ、この状況で落ち着いていられる方がよっぽどすごいと思う。
しかし、ずっとこの場に突っ立っているわけにもいかない。
行ってみよう、かな。
悩んだあげく、私は覚悟を決めた。
ゆっくりと一歩ずつ、鳥居に向かって歩き出す。
そうして鳥居の真ん前にたどり着いた時、まるで光の中に吸いこまれるようにして私の意識はそこでぷつりと途絶えた。
そういえば、あの巫女の人、前にどこかで見たことあるような気が……。
青いまるで海のような光の中、おぼろげな頭の中で、彼女の綺麗な横顔が何度もちらついた。