手術室のライトが消えると、私は真っ先に担当医の人のところへ向かった。
待っている間もずっと、まるで生きた心地がしなかった。
結論からいうと、波琉はなんとか一命を取りとめた。
けれど、決して安心はできない。
というのも波琉は脳に激しい損傷を負ってしまったらしく、いつ目を覚ますかもわからない、いわゆる昏睡状態なのだという。
病室のベットで横たわる波琉を前に、私はずるずるとその場に崩れ落ちた。
嫌だ、こんなの……。
体のあちこちを包帯にまかれ、チューブのような物に繋がれた彼の痛々しい姿。とても直視なんてできなくて、私は思わず目を塞いだ。
「なんで、こんなことに……」
全員が全員、意気消沈していた。
お母さんは波琉の前でひとしきりの涙を流し、普段、感情を滅多に表に出さないお父さんですら今日ばっかりは深い悲しみの色を浮かべていた。
そんな中、肝心な夏月さんだけは落ち着いて見えた。
いつかきっと波琉は目を覚ますと、夏月さんは信じて疑わない。
夏月さんのような強さが、私にもあったらよかったのにと思った。