その後、駆けつけた救急車によって波琉は病院に搬送された。

 一刻を争う危険な状態なのは誰の目から見ても一目瞭然で、至急、手術室に運ばれていった。

 全部、私のせいだ。

 私が波琉を呼び出したりなんかしたから。

 もっと早くに告白の返事をしていれば、こんなことにはならなかった。
 
 いっそ私が、はねられればよかったのにっ。なんで私を庇ったの、波琉……。

 私は一人、病院のロビーで泣いていた。

 お母さんとお父さんは一度外に出て、話をしているみたいだった。

「美海ちゃん」

 頭上から降りかかってきた凛とした声に、顔を上げる。

夏月(なつき)さん……?」

 そこにいたのは、波琉のお母さんでもある夏月さんだった。

 いつも髪を一つに結んでいて、女性にしては少し背が高い。

「ごめん、なさいっ……!」

 ひゅっと喉が引きつる。

 必死に絞り出した声は情けないくらいに震えていた。

 多分、もう警察やらお母さんから話は伝わっているんだろう。

 波琉を事故に遭わせたのは、私のようなものだと。

「美海ちゃんは何も悪くないわ。それに事故は車側の過失だったって」

 ごめんなさい、ごめんなさいと、泣きながらバカの一つ覚えみたいにくり返す私に、夏月さんは優しく、けれど少し悲しそうに笑いかけた。

「……怒らないんですか?」
「うん、だって逆に怒る要素どこにもないじゃない」

 ふわりと温かくて柔らかい感触。

 驚いて顔を上げると、夏月さんが私の頭をなでてくれていた。

「それに波琉はきっとこれくらいでへばったりしない。だから、もう謝らないで」

 優しさにあふれたその手の温もりがどこか波琉に似ていて、私は夏月さんの腕の中に包まれながら顔を押し付けて泣きじゃくった。