「それだけ?」

「それだけ……って?」

「話はそれだけなのー?って」

「うん、まあ……そう。」

「なんだ。そんなことならメッセージでよかったのに。」



 心と会うのを楽しみにしていた自分が情けなく感じてくる。



「だって…翔馬は大切な友達だから直接伝えたくって。」

「友達…ね。」

「ん?友達じゃなかった?仕事仲間?」

「ううん、友達だよ。……大切な友達。」



 そのあと、心と何を話したかなんて全く覚えていない。

 だって、今にも溢れそうな涙を堪えるのに必死だったから。

 人生で初めて好きになった人が弟と結ばれて。

 行き場のないイライラと自分を情けなく思う気持ちで押しつぶされそうになっていたから。



 気がついたらもう家のドアの前に俺はいた。



「引っ越そう…かな。」



 俺は少しだけ翔悟と距離を取ることにした。


 翔悟は何も悪くないのに心への気持ちが暴走して八つ当たりしてしまいそうだったから。