ぼけっとしていた私の顔の前で手を振っている翔馬さんがいきなり目に映った。
「俺、このあと3人とは別の仕事行かなきゃいけなくて、ひなちゃんに着いてきてもらうことになったんだけど……なんか、大丈夫?」
「ぜーんぜん、大丈夫です!」
「そう?無理しないで疲れたらすぐ言うこと。わかった?」
そう言って翔馬さんは、私の頭をぐしゃぐしゃっとした。
「うう…ありがとうございます……。」
「ひなちゃん、かわいいね。」
「はい?」
「なんか犬みたい。」
「は?」
いきなり意味わかんないことを言ってくるから、“は?”なんて失礼なことを言ってしまった。
「あ、ごめんごめん。こんなこと言われても嬉しくないか。」
「バカにしてますよね〜?」
「してないよー。」
そう言って、クスッと笑った翔馬さん。
複雑そうな、悲しそうな顔をしているより何倍も素敵な表情だ。