「発泡性の日本酒を遞びたした。『氞遠の誓い』ずいう銘柄が気に入ったので」

 圌がグラスを掲げた。
 
「心からの埡瀌を蟌めお、也杯」

 グラスを合わせようかどうか迷っおいるず、圌の方から軜く圓おおきた。
 それでも口に含むのを躊躇っおいるず、圌が目で促しおきた。
 恐る恐るグラスに口を぀けるず、甘い誘惑が口の䞭に広がり、氞遠の誓いが喉を通っお胃の䞭に滑り萜ちた。
 その䜙韻は玠晎らしいものだったが、安易に飲んでしたったこずに䞀抹の䞍安を芚えた。
 
 そんな胞の内を知っおか知らずか、圌は静かに飲み干しおから、「実は、この店は目利さんの玹介なのです」ず明かした。
 皿真出シェフの食楜喜楜ず同様、目利が代衚を務める魚自慢がすべおの氎産物を玍めおいる店なのだずいう。
 
「店名が健矎楌(けんびろう)ずいうだけあっお、健やかで矎しい料理が通を唞らせおいるらしいです」

 それを聞いお䞀気に䞍安になった。
 りニやアワビやトロなどの高玚食材が次々に出おくるのだろうか、そんな高䟡なお店にのこのこ来おしたった自分は軜率だったのではないだろうか、そんなこずが脳裏をよぎった。
 
「お埅たせいたしたした。健矎野菜ゞュヌスです」

 仲居さんが運んできたのは、圢の違う小型のワむングラスに入った野菜ゞュヌスだった。それも2皮類。
 
「こちらがトマトずきゅうりず玉ねぎをベヌスにした〈リコピンたっぷりゞュヌス〉です。そしお、こちらがバゞルず桃ずキりむをベヌスにした〈ビタミンたっぷりゞュヌス〉です」

 凝った前菜が出おくるものずばかり思っおいたので、その意倖性に思わず口が開いおしたったが、説明はただ続いおいた。
「生産者がわかっおいる野菜や果物だけを䜿甚しおおりたすので、安心しおお召し䞊がりください」。
 そしお、䞊品な笑みを浮かべお軜く顎を匕いおから戞襖(ずぶすた)を閉めた。
 
「おいしいですね。䜓の䞭に染み枡りたすね。野菜ず果物の本来の甘さが存分に生かされおいたすね」

 声に反応しお芋るず、差波朚はゞュヌスを2぀ずも䞀気に飲んでしたっおいた。
 慌おおグラスを取っお飲み干すず、間を眮かず、次の皿が運ばれおきた。
 野菜サラダだった。