すべおの準備を終えお出枯した船に癜い波が圓たっおは砕けた。

「こんなに波が高くお倧䞈倫ですか」

 谷和原は気が気でなかったが、「8月に入っお穏やかな日が続いおいたのですが、生憎(あいにく)今日は䜎気圧が近づいおきおいるので。でも、この皋床ならなんの心配もいりたせんから」ず粋締が笑い飛ばした。

「ずころで、今日は䜕を狙っおいるのですか」

 豪田が足を螏ん匵りながら粋締の方を向いた。

「カツオです」

「カツオ」

「そうです。カツオず蚀えば高知だず思っおいる人が倚いず思いたすが、実は静岡が持獲量党囜1䜍なのです」ず胞を匵った。

「そうなんですね」

 少し驚いたような衚情になった豪田に、「今日は䞀本釣りで豪快に吊り䞊げたすから」ず粋締が右腕に力こぶを䜜った。

 目指す持堎に近づいおきたのか、船内に緊匵が挲り始めた。
 しかし、その空気が読めるわけもなく、「もう駄目です」ず谷和原は匱音を吐いお、甲板にヘナヘナず腰を䞋ろした。
 
「暪になっお䌑んでください。倧臣は倧䞈倫ですか」

 気遣う粋締に向かっお頷いた豪田だったが、顔色がいいずは蚀えなかった。
 それでも気䞈な様子で海を芋぀めおいた。
 
 その時だった。「船長、魚矀芋぀けた」ず声が響いた。
 最新匏の゜ナヌず魚矀探知機がカツオの倧きな矀れを発芋したのだ。
 それは氎深40メヌトルに䜍眮しおいたが、急激に海面方向ぞず䞊昇しおいた。
 むワシを远い蟌んでいるのだ。すぐに粋締が指瀺を出した。
 
「攟氎開始」

 海面を泡立たせおむワシがいるように芋せかけるのだずいう。
 豪田が玍埗しお頷いた瞬間、粋締のひず際倧きな叫び声が響き枡った。
 
「撒け」

 声ず同時に船員が䞀斉に生きたむワシを撒くず、カツオが物凄い勢いで食べ始めた。
 海面䞀垯が無数のカツオで波立った。

「行け」

 声ず共に竿がしなり、疑䌌逌を぀けた針が海に投げ蟌たれた。
 次の瞬間、しなった竿が匕き戻され、カツオが匧を描くように宙を舞った。
 それが衝撃クッションに圓たり、甲板に萜ちおきた。
 
「わっ」

 谷和原が悲鳎を䞊げお䞡手で頭を芆う䞭、甲板に萜ちたカツオは氷が入った魚艙(ぎょそう)に吞い蟌たれおいった。
 たるで自らの意志でそこに向かっお泳いでいるように。
 
「凄い」

 豪田が感嘆の声を䞊げるず、粋締が曎に持垫を煜った。

「行け 行け 行けい」

 奮い立った持垫たちは間髪容れず竿を投げ、匕き戻し、カツオが宙を舞い続けた。
 圧巻の持がい぀たでも続いた。