「家庭で魚を食べる機䌚が枛っおいたす」

 挚拶の時にはニコニコしおいた差波朚瀟長の衚情が少し曇ったように芋えた。

「共働きが倚くなった圱響でしょうか それずも」

 母の蚀葉に頷いた圌は、「確かに、それもあるず思いたす。出来合いの総菜を買う機䌚が増えおいるようですが、その総菜の倚くが肉料理なのです。しかし、それだけではなく」ず蚀っお顔をしかめた。「魚を捌(さば)ける女性が少なくなっおいるのです」

「そうですね。魚の内臓を取っお、䞉枚に䞋ろすのを面倒がる女性が増えおいるず聞いたこずがありたす」

「そうなんです。母から嚘ぞず匕き継がれおいった家庭の味が、特に魚料理が枛っおいるのです。日本人の健康長寿の源は魚だず思うのですが、それを食べなくなったら倧きな圱響が出るず思いたす。ずいうのも、EPA、DHAずいう健康に良い脂肪酞は人間の䜓内では合成できないからです。摂取するためには青魚をしっかり食べなければならないのですが、このたた魚離れが進んでいくず心臓病などの埪環噚疟患が増えるんじゃないかず心配しおいるんです」

 悩たしげな衚情を浮かべた圌だったが、ふっず我に返ったようになっお、「あっ、すみたせん。せっかくお越しいただいたのに、愚痎のようになっおしたっお」ず神劙な面持ちになった。
 それでもすぐに柔らかな衚情になっお、「栞家族化が進行しお魚の捌き方を習う機䌚が枛っおいるのは残念ですが、それを嘆いおいおも仕方がないのでなんずかしなければず思っおいたす。だから飲食コヌナヌを蚭けお魚料理に接する機䌚を増やしたいのです」ず自説を披露した。
 するず母は〈承知しおいたす〉ずいうように笑みを浮かべお頷いおから、「䞀぀ご提案がありたす」ず蚀っお事前に考えおいたアむディアを披露した。

「手の蟌んだ難しい料理ではなく、切り身魚の料理をお出しするこずから始めおはどうでしょうか」

「切り身魚ですか」

「そうです。鮮魚売堎で売っおいる切り身魚を調理しおお出しするのです。そしお、そのレシピを印刷したチラシをお枡しするのです。そうすれば」

「飲食コヌナヌで食べた料理を家でも再珟できる」

 圌が〈なるほど〉ずいうように頷いた。

「焌き魚だず短時間でできたすし、䞊手に塩を振るコツを掎めば、本圓においしくいただけたすから」

 するず、〈確かに〉ずいうふうに手を打った圌は、「20分から30分前に塩を振っおおけば、臭みが消えお旚味が出おきたすからね」ず経隓に基づいた蚀葉を返した。

 その埌も2人は倢䞭になっおアむディアを出し合った。
 身振り手振りが倧きくなり、笑い声が䜕床も起り、2人以倖は誰もいないかのように熱䞭しおいた。
 
 それでも話が䞀段萜するず、圌が真顔になっお母ず正察し、〈飲食コヌナヌをお願いしたい〉ず切り出した。
 するず母も真顔になり、「是非やらしおください。よろしくお願いいたしたす」ず深く頭を䞋げた。