なんの成果もないまま乗り込んだ帰りの飛行機で安室を聴く気にはなれなかった。
 出張旅費に対する成果がゼロなのだ。
 落ち込んだ気持ちを立て直すことができず、空港で買ったサンドイッチを手にする気もおこらなかった。
 どうせ食べてもなんの味もしないことがわかっていたからだ。
 
 することがなくなって目を瞑ったが、当然ながら眠ることはできなかった。
 それならワインの力を借りようかと思ったが、悪酔いすることが容易に想像できたので止めた。
 ため息を二度ほどついてもう一度目を瞑り、頭に思い描きながら数えだした。
 羊が1匹、羊が2匹、3匹、4匹、5匹、6匹……、
 99匹目で意識が遠のいた。