「凄い議論だね」

 幸夢と海野は『日本漁業の未来研究会』の議事録を読んで頷き合った。
 
「しかもこんなに早く議事録が公開されるなんて……」

 今までの漁業水産省とは違う対応にも驚いていた。
 舞台裏は知る由もなかったが、非公開を考えていた谷和原事務次官を叱り飛ばした豪田大臣が迅速な公開を指示したという噂が漏れ伝わって来ていた。
「すべてオープンにします。それも迅速に」と大臣が言ったらしい。

「日本の漁業が変わるきっかけになるかも知れないな」

「そうね。議論の流れが漁業者への配慮から資源保護に変わったから、このままいけば」

「期待したいね。でも、既得権という大きな壁を破るのは簡単ではないからね」

「漁業連盟のこと?」

「それもあるし、それ以外の要因もある。次回の議論がどうなるか……」

 議論の行方を心配する海野に、幸夢は頷くしかなかった。