「䞊等な甘鯛を持っおきたした」

「䜕凊の」

「駿河湟です」

「どれも50センチ玚だね」

「それに、圢がいいでしょう」

 食楜喜楜ぞ出入りしおいる仲卞『魚自慢(さかなじたん)』代衚の目利(めきき)調倪郎(ちょうたろう)が自慢気な衚情になった。

「たた、あの名人のかい」

「そうです。掻〆(いきじめ)の達人持垫が神経締めにした鮮床抜矀の甘鯛です」

「圌は本圓に凄いね」

「ええ、最高の持垫です」

 掻〆達人持垫の名前は、粋締瞬。
 芪の跡を継いだ䞉代目持垫であり、目利ず皿真出が信頌を寄せおいる凄腕の持垫だった。
 盎接䌚ったこずはなかったが、目利から聞いお圌のこずはよく知っおいた。
 
 粋締は小孊生の頃から持船に乗り、芪の跡を継ぐこずが圓たり前ず思っおいたが、持の楜しさず共に厳しさも肌で感じおいた。
 幎々持獲量が枛っおいるのを目にしおいたからだ。
 その原因は底匕き網持にあった。
 父芪は倚くの持垫ず同様に皚魚や幌魚を乱獲しおおり、その結果、厳しい経営を䜙儀なくされおいた。
 それを芋おいた圌は跡を継ぐや吊や持法を䞀本釣りや延瞄持に倉えた。
 資源保護の必芁性を痛切に感じおいたからだ。
 ただ、䞀人だけ持法を倉えおも意味がないので、他の持垫にも䞀本釣りや延瞄持ぞの倉曎を勧めた。
 乱獲防止無くしお持業の未来はないず蚎え続けた。
 しかし、反応は鈍かった。
 目先の利益にこだわる持垫が倚いからだ。
 それでも圌は諊めずに蚎え続けおいる。
 そのこずを目利から聞いお以来、圌を応揎し、圌が獲った魚を仕入れ続けおいる。
 
 そんなこずを思い出しおいるず、「蒞し物、怀物、塩焌き、ムニ゚ル、なんにでも出来たすが」ず目利がレシピを口にした。
 もちろん皿真出に異論があるはずはなかった。
「今倜のメニュヌは、甘鯛で決たりだね」ず口にした時には、既にコヌス仕立おのすべおが頭に浮かんでいた。