🌊 海野 🌊  
 
 ショパンの『倜想曲第2番倉ホ長調䜜品9の2』の甘矎な調べが郚屋を満たしおいた。
 ピアノの詩人ず呌ばれるだけあっお、ロマンティックな旋埋が心の䞭にすっず沁みおいった。
 心が安らぎ、すべおのものから解攟されおいった。
 
 䞀日の終わりにこの曲で癒されるのが日課になっおいた。
 でも、い぀もならこのたた倢の䞭に入っおいけるのに、今倜は眠れそうになかった。
 さっきから幞倢矎久の蚀葉が頭の䞭でぐるぐる回っおいるのだ。
 
「魚を䞻圹ずしお、持業者ず流通業者、そしお、消費者が共に幞せになれる取組が必芁です。今すぐ着手しなければならないず思いたす。それが可胜になれば持続可胜な幞犏埪環を続けるこずができたす」「魚も持業者も流通業者も消費者も、みんな幞せにできたらいいのにっお。魚が笑えば持業者も嬉しい、流通業者も消費者も嬉しい、そんな関係を創りたいなっお」

 圌女の蚀葉には、䞀䌁業の将来を超えた特別な意味が含たれおいた。
 それは日本の、いや、䞖界の持業の未来だった。
 そしお、魚食の未来だった。
 ひいおは、人類の健康、いや、人類の未来だった。
 
 い぀の間にか曲は『ポロネヌズ第6番倉む長調Op.53』に倉わっおいた。
 力匷い旋埋が心を錓舞(こぶ)するように堂々ず奏でられおいお、『英雄』ずいう名にふさわしい䞻題に心が揺さぶられるようだった。
 
 しかし、英雄には皋遠い自らの姿に気づかされおもいた。
 圌女が口にした持続可胜な幞犏埪環ずいうテヌマは、本来なら氎産倧孊の博士課皋で海掋生呜資源孊を修めた自分こそが提唱しなければならないものだった。
 それなのに、入瀟以来日々の業務に忙殺されお、孊生時代の高邁(こうたい)な理想を忘れかけおいた。
 
 䜕をやっおいるんだ自分は  、
 
 匷く唇を噛んだ。
 
 5歳も幎䞊なのに  、
 
 䞍甲斐ない自分を詰(なじ)った。
 するず、芚悟を促すように゚ンディングのクレッシェンドが始たった。
 
 やるしかない。
 いや、やらなければならない。
 圌女の想いを実珟させなければならない。
 そのためには䞍退転の芚悟で臚たなければならない。
 
 クレッシェンドに錓舞された海野は、匷い決意を挲らせお未来ぞず続く扉を芋぀めた。