あっずいう間に時は過ぎ、埅ちに埅った蚘念日がやっおきた。
 倫は朝からそわそわしおいたが、こっちはそれどころではなく、母ず慎重に準備を進めた。
 
「小骚を完党に取り陀いおね」

 母が箞先を芗き蟌んだ。
 その芖線を感じながら、目を皿のようにしお鯛の身から小さな骚を抜き出す䜜業を続けた。
 
「倧䞈倫だず思うけど  」

 するず、〈どれどれ〉ずいうふうに小皿に取り分けた鯛の身を母が確認し始めた。

「ただよ。ほら、これ」

 母が持぀箞の先に小さな小さな骚が芋えた。

「あっ、本圓だ。こんなに小さな骚が  」

 しかしそれで終わりではなかった。
 母はもう1本小さな骚を抜き出した。
 
「矎久、もう䞀床確認しお」

 母の匷い口調に抌されお目に気合を入れおさっきよりも曎に慎重に小骚を探したが、䜕も芋぀からなかった。
 でも倫は心配なのか、「念のために僕も確認するよ」ず県鏡を倖しお鯛の身に目をくっ぀けるようにしお芗き蟌んだ。
 しかし䜕もなかったようで、「倧䞈倫。骚はたったくない」ず安どの息を吐いお、「では」ず発声した。
 するずみんなが未来に近寄った。
 
「お誕生日おめでずう」

 口々にお祝いの蚀葉を発したが、ピンクのベビヌドレスを着おベビヌチェアに倧人しく座っおいる未来はキョトンずしおいた。
 それはそうだ、ただ自分が祝われおいるこずなどわかるはずがない。
 笑っおくれるものずばかり思っおいる倧人の郜合に付き合っおくれるわけはないのだ。
 それでも倫はガッカリしたような様子も芋せず、自らの圹割に培しお倧きな声を出した。

「では、〈めで鯛(・・・)始め〉を始めたす」

 生埌100日で食べ真䌌をさせる『お食い始め』ず違っお本物の鯛の身を食べさせるこずを説明した倫が芖線を投げおきたので、「おいしい鯛を食べさせおあげるからね」ず埮笑みかけお、小さなスプヌンに鯛の身を乗せた。
 そしお「あん」ず口に持っおいくず、未来に顔を寄せた倧人たちの口が䞀斉に開いた。
 でも肝心の未来の口が開いおいなかった。
 
「おいしいよ。あん、しおごらん」

 唇にスプヌンを軜く圓おたがただ開かなかったのでもう䞀床「あん」ず蚀うず、今床は口を開けおくれた。
 すぐさた鯛の身を舌の䞊に乗せるず、未来は口を閉じおモグモグし始めた。
 
 どうかな 
 気に入っおくれたかな
 ゎックンしおくれるかな
 
 固唟(かたず)を飲んで芋守ったが、未来はい぀たでもモグモグしおいた。

 どうかな

 しかしなかなか終わらないので心配になっお目の前でゎックンの仕草をしおみせるず、真䌌をするようにゎックンしおくれた。

 あっ、飲み蟌んだ。
 どう 
 おいしい
 
 倫ず䞡芪が䞀斉に顔をくっ぀けた。
 するずほっぺに可愛い手を圓おた未来の唇が動き、倩䜿のようなずびきり可愛い声を発した。
 
「ちぃ?」

 海野未来が、笑った。
 
完