──ざー、ざぱーん。ざー、ざぱーん。
◇
始まりの日。令和四年五月十七日。火曜日。
「いえーい、アラカブまた一匹ゲットー」
「たいようばっかりずるいぞ、僕だって!」
僕とたいようは地元の小学校に通う小学三年生。
たいようのお父さんに連れられて、念願の釣りデビュー。
だってお父さんったら、一度も釣りに連れて行ってくれないんだもん。
今日の「勝負」は、ずばり釣り対決だ。
どっちがたくさん釣れるか。
どっちが大物を釣れるか。
シンプルな勝負でしょ。
でも、足元にある水の入ったバケツには。
たいようの方にしか魚がいない。
「むう、また餌だけ持っていかれたー」
「はは、あお、超へたー!」
思ったより釣りは難しかった。
おかしいなあ。
僕の予定だと、バケツたっぷりお魚釣って、今晩お母さんにおさしみにしてもらうはずだったのに。
「まただー」
「ぎゃははは」
失敗するたびに笑うたいように、だんだん腹が立ってきた。
あ。
またたいように魚がかかった。
なんだろ、銀色でぴかぴかしてる。
「見せてよ」
「だーめ、あお、盗る気だろ」
「そんなことしないよ」
でも、たいようは見せてくれない。
見せてよ。やだよ。見せて。やだ。
だんだん、釣りそのものがつまらなくなってきてしまった。
「いいもん、僕はあっちで釣る!」
「なんだよ、ビビリ、逃げんのかー?」
かちん。
釣果で負けていた僕は、この一言にとても腹を立てた。
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始まりの日。令和四年五月十七日。火曜日。
「いえーい、アラカブまた一匹ゲットー」
「たいようばっかりずるいぞ、僕だって!」
僕とたいようは地元の小学校に通う小学三年生。
たいようのお父さんに連れられて、念願の釣りデビュー。
だってお父さんったら、一度も釣りに連れて行ってくれないんだもん。
今日の「勝負」は、ずばり釣り対決だ。
どっちがたくさん釣れるか。
どっちが大物を釣れるか。
シンプルな勝負でしょ。
でも、足元にある水の入ったバケツには。
たいようの方にしか魚がいない。
「むう、また餌だけ持っていかれたー」
「はは、あお、超へたー!」
思ったより釣りは難しかった。
おかしいなあ。
僕の予定だと、バケツたっぷりお魚釣って、今晩お母さんにおさしみにしてもらうはずだったのに。
「まただー」
「ぎゃははは」
失敗するたびに笑うたいように、だんだん腹が立ってきた。
あ。
またたいように魚がかかった。
なんだろ、銀色でぴかぴかしてる。
「見せてよ」
「だーめ、あお、盗る気だろ」
「そんなことしないよ」
でも、たいようは見せてくれない。
見せてよ。やだよ。見せて。やだ。
だんだん、釣りそのものがつまらなくなってきてしまった。
「いいもん、僕はあっちで釣る!」
「なんだよ、ビビリ、逃げんのかー?」
かちん。
釣果で負けていた僕は、この一言にとても腹を立てた。

