【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 希望が残されたと知った時、君ならどうする?
 絶望の中で小さな小さな、最後の希望を見つけたとしたら。

 一生懸命になるんじゃないかな。
 がむしゃらになるんじゃないかな。

 この時の僕が、そうだった。

 それが、生きるということだ。

 いつか、いつか君にもわかる。
 生きるということがどういう意味を持つのか。

 いつか、君にも。



『はい、私が知っていること、きみのお姉さんの秘密。すべて話したよ』

 写真の中のきぃ子ちゃんは、僕の手の中で、笑った。
 とても、寂しそうに。

 二年と九十三日前に起きた事故。

 きぃ子ちゃんが持ち掛けた反魂術(はんこんじゅつ)
 僕の代わりに死んだ友達。

 全部を知っていたお姉ちゃん。
 僕のため一度死んだお姉ちゃん。

 そんなお姉ちゃんを生き返らせたくて死んだ──きぃ子ちゃん。

 ぜんぶ、わかった。
 いや、思い出した。

「ねえ、きぃ子ちゃん。僕はあと、一年と二百七十五日後には、死ぬの?」
『……そうだね。反魂術の効果期間は二年だから』

 はあ。きぃ子ちゃんはため息を吐いた。

『それまでに誰かの魂を(にえ)にすれば』
「ううん」

 それは、もういい。
 もう誰かが僕のために不幸になるのは見たくない。

 でも、お話を聞いていて、閃いた。

 ひとつだけ、僕が知っていて、きぃ子ちゃんが知らないことがある。
 賭けるなら、もうそれしかない。

「きぃ子ちゃん。きぃ子ちゃんが知っている不思議な術、他にどんなのがあるの?」
『え?』