【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 KA:あつまったかい。

 既読:あつまったよ。全部集めた。

 KA:よくがんばったね、あさぎ。

 既読:それで、いつにする? 今日?

 KA:今日は太陽と月の位置がよくない。本当は十四日待ちたいところだけど。

 既読:そんなに待てないよ。

 KA:そうだね。そうだよね。ふむ、じゃあ今月の二十日。五月二十日の金曜日にしよう。

 KA:放課後、帰らないでクラスで待ってて。

 既読:わかった。二十日ね。待ってる。



 第一日目。命を選ぶ日。令和四年五月二十日。金曜日。

「気を付け。さようなら」
「さよーなら!」

 ひとつしかない五年生のクラスの、取るに足らない本日の授業が終わった。

 いつも通りだ。
 何も変わらない、金曜日の午後三時半。

 けれど私──■■君を亡くしかけているあさぎという名の五年生の女の子には、特別な日になる。

 なぜなら。

 ──ふたりの命の、どちらかを選ぶ、その一日目となるのだから。

 今日の授業も、まったく頭に入らなかった。

「あさぎー、神社で遊ぼう」

 私の席は真ん中の列後ろから二番目。
 左に目をやって、窓際を見る。

 前から二番目、ポニーテールの後ろ姿が見える。
 誰にも話しかけられず、帰りの会が終わってもじぃっと、座っている。

 安西さんはヒトのお友達を作るのが苦手だ。
 いつも独りでいる。
 でも、そんなの私は気にしない。
 彼女の凛とした後ろ姿が、私は大好きなのだ。

「ねえ、あさぎったらー」
「あ……めぐ、ごめん、今日はパスー」

 私は慌ててめぐみに返事をする。
 ──いけない、どんなに我慢しても平静でいられない。

 今日この後実行する儀式で、ヒトの命が決まると思うと、胸の奥がきゅうってなる。

「なによう、もう」

 めぐみは仲良しの他のグループと帰っていった。

 ひとり、またひとりと今日の授業が終わったクラスから人が去ってゆく。
 先生も、黒板をごしごしと消すと、職員室に行くのか、教室を後にした。

 そしてとうとう、五年生のクラスは私と、安西さんだけになった。