君に、考えてみてほしい。
愛しいひとがいなくなってしまったら?
君に、想像してみてほしい。
そのひとが居た、証拠も、痕跡も失われてしまったら?
君なら、できるよね。
想像できるよね。
どうか考えてみて、ほしいんだ。
◇
二年と八十五日目。令和六年八月十二日。月曜日。
ミーンミンミンミン──……。
六時五十分、朝。
真夏の日差しは、こんな時間でも、寝室を容赦なく焦がしてくる。
僕の部屋は白日光を大好きな魚模様の水色のカーテンで遮っているから、薄明り。
昨晩からついてるとても古いエアコンが、必死に頑張って涼風を届けてくれている。
僕は、そんな薄暗い部屋の中で、ひとり学習机の椅子でひざを抱えてうなだれている。
考えているんだ、ずっと最近の違和感を。
『泣いてるの?』
口裂け女さんが、机の上に並べられたインスタント写真の中から聞いてきた。
『ボク、元気少ないね?』
「寂しくて」
ぽた、ぽた。僕は大粒の涙でほっぺたをぬらす。
「どうして居なくなっちゃったんだよ」
『いなくなったってぇー、だれがー?』
トイレの花子さんが聞いてくる。
「誰って、それはもちろん……」
『もちろんー?』
花子さんは不思議そうに首をかしげるが、どうしてか僕には思い出せない。
『おぼえていないの? ほんとうに?』
座敷童くんは何かを知っているのだろうか。
『えへへ、あさぎちゃん、忘れっぽいから』
一つ目小僧のお鈴ちゃんが笑う。
愛しいひとがいなくなってしまったら?
君に、想像してみてほしい。
そのひとが居た、証拠も、痕跡も失われてしまったら?
君なら、できるよね。
想像できるよね。
どうか考えてみて、ほしいんだ。
◇
二年と八十五日目。令和六年八月十二日。月曜日。
ミーンミンミンミン──……。
六時五十分、朝。
真夏の日差しは、こんな時間でも、寝室を容赦なく焦がしてくる。
僕の部屋は白日光を大好きな魚模様の水色のカーテンで遮っているから、薄明り。
昨晩からついてるとても古いエアコンが、必死に頑張って涼風を届けてくれている。
僕は、そんな薄暗い部屋の中で、ひとり学習机の椅子でひざを抱えてうなだれている。
考えているんだ、ずっと最近の違和感を。
『泣いてるの?』
口裂け女さんが、机の上に並べられたインスタント写真の中から聞いてきた。
『ボク、元気少ないね?』
「寂しくて」
ぽた、ぽた。僕は大粒の涙でほっぺたをぬらす。
「どうして居なくなっちゃったんだよ」
『いなくなったってぇー、だれがー?』
トイレの花子さんが聞いてくる。
「誰って、それはもちろん……」
『もちろんー?』
花子さんは不思議そうに首をかしげるが、どうしてか僕には思い出せない。
『おぼえていないの? ほんとうに?』
座敷童くんは何かを知っているのだろうか。
『えへへ、あさぎちゃん、忘れっぽいから』
一つ目小僧のお鈴ちゃんが笑う。

