「そろそろ、帰らなきゃな……」


どこか名残惜しそうな表情で、私と同じようなことを言う朔に、なぜだかどきりとした。


朔と過ごした時間は、ちょっとだけ、楽しかった。また話せたらいいな、なんて柄でもないことを感じて、なんだか不思議な感じがする。


「ねえ、鈴音。お願いがあるんだけど」

「……お願い?」

「話さない? 放課後、ここで」


主語がはっきりしない朔の言葉。でも、それが何を意味するのかは、きちんと私には理解できた。


……放課後、この公園にきて、話をしようと言うのだ、朔は。


ここは、私の秘密の場所だった。私にとって、唯一1人でいることのできる大切な場所。今断れば、私はこの場所を守ることができる。


もしも賛成すれば、私は放課後、朔と話すことになる。楽しそう、なんて少し思ってしまった私に、ふ、と小さな笑みがこぼれた。


「いいよ、話そう」


なんだかわくわくしたのだ、朔と話す時間を過ごすことに。これからどんな日々になるのかなんて想像は出来ないけれど、楽しくなりそうだと思った。ただの、私の直感だけれど。