まって。私、彼に話しかけられてから、全然〝完璧〟って感じがしなくない? 完璧じゃないと悟られてしまってはまずい。そう考えて、私は口元に笑みを浮かべた。


「私? 私はね、望月 鈴音って言うんだ」


緊張や驚きなどそんな感情は見せずに、笑顔で川瀬くんに伝える。すると、川瀬くんは「あー!」と私を見て目を少し開いた。


「鈴音、ね。噂の子かな」

「……噂の子?」


「多分だけど2組の子だよね? 俺のクラスで、2組の望月さんっていう子が完璧だって、軽く噂みたいになってて」


……確かに完璧になれるように頑張っているけど、それが他クラスまで届いているとは。嬉しい反面、どこか恥ずかしかったりする。自分の感情だけど、うまく説明できない感情だ。


「あはは、そうなの? ありがとね、そんなふうに言ってくれて」

「んー? どーいたしまして」


にこりと川瀬くんは笑った。川瀬くんが笑顔で話しかけてくれるので、少しずつ緊張がとけていく。