「えっと……2年生」
急に話しかけられた驚きと、ここに人が来ると思わなかったという驚きで、上手く言葉を紡ぐことができない。
私がなんとかそれだけを発すると、彼は少しだけ驚いたような顔をして、それからまた笑顔になった。
「嘘、2年生? 俺も2年生! え、名前は?」
どこか興奮気味な彼の様子を、私は数秒見つめ返した。少し話しただけでも分かる。この人は、ずいぶん社交的な性格だ。根っからが明るい人なんだろう、きっと。
でも私は、この時間だけは1人でいたかった。ようやくここで1人になって、息ができるような、そんな時間。それを誰かに踏み入ってほしくない、という意地の悪い思いが、正直大きい。
名前を名乗るべきか、そうじゃないべきか。
すると、そんな私の考えを察したのか、彼は笑顔で口を開いた。
「俺はね、2年4組の川瀬 朔。君は? あ、無理して言わなくてもいいけど」
……名乗らずにはいられない状況になってしまった。
私は心の中でため息をついた。