二年間の思い出も、
これからのまだ見ていない未来のせいであっさりと切り捨てられた私を
親友は腹の底から愉快そうに笑い飛ばした。

「音ってばほんっとサイコーだね!?こんなに顔は可愛いのにフラれてばっか。ちょっとは改心したらいいのに」

「極悪人みたいに言わないでくれる?省エネ人間なの私は」

「エコに勤しむのはいいけどさ、じゃあその蓄電した分はいつ発散するの?」

「まだ、今がその時じゃないってだけ!」

「そんなこと言ってたら自分のエネルギーで感電して死んじゃうんじゃない?」

「もー!慰めてよ被害者なんだから!」

食ってかかる私の前髪を
ゆるーい手つきで撫でながら親友は「落ち着いて、落ち着いて」って微笑んだ。

「ね、いい機会だからさ、行ってみない?あの話題のスポット」

「話題のスポット?」

「ペットカフェ?駅前からちょっと路地に入ったところにさ、いろーんな種類の″ペット″を見学できてぇー、そのまま遊んでもいいし、オキニができたらお泊まり体験もできるんだって」

「お泊まり体験?」

「連れて帰っていいんだって。一泊一万円前後」

「たかぁ」

「命だからね」

「まぁね。でも連れて帰るのはさすがにムリでしょ」

「なんで?」

「なんでって親が居るし」

「音んちは平気っしょ。お父さんもお母さんも帰り遅いでしょ?さっさと部屋に連れ込んで大人しくさせとけばいいんだよ」

「″させとけば″って言い方な!生き物なんだからそんなうまいこといかないでしょ」

「いーから一回行ってみようよぉー。興味あるでしょ?そこで遊ぶだけでもいいじゃん」

「あんたが行きたいから私をダシにしてるんでしょ!?」

「バレた?」

「バレバレだよ…。あーっもう分かったよ!一回だけだからね?」

そんなこんなで渋々、
本当に渋々了承した私が口座からお金をおろすのを
親友は奥歯を噛み締めて笑いをこらえていた。

私、失恋したことが思っていたよりも
ショックだったみたい。