「お待たせしました」
エントランスに来てみればアレクシス王子を出迎えるために皆様勢揃いだわね。
まぁ当たり前なんだけども……。
なんだかこの雰囲気だけで今すぐここから逃げ出したい気分よ。
「まぁエレノア、なんて綺麗なのかしら。とっても素敵よ!! ねぇリチャード?」
「あーー本当に美しいな。さすが我が娘だっ!!」
んっ!?
さっきも同じようなことを言っていた方がおられたような……。
「だから言ったじゃないですかっ、父上、母上。今日のエレノアは本当に美しいと。さすが我が妹です!!」
「お兄様…… あまり褒めていただくと照れますので」
「思ってることを言ったまでだよ!!」
ーーお父様とお兄様は容姿も似ている。
ーー女性好きなところも似ている。
ーー言うことまでも似ている。
そしてご自分達が私に好かれていないってことに全く気づいておられないところも似ているわね。
「あっ、城門が開いた。ご到着されたようだ。馬車が城に入ってきましたね…… 父上」
「そのようだな…… アレクシス王子は未来のエレノアの夫となる方だからな。皆で手厚く出迎えようではないか!!」
ーーみ、み未来の夫って……。
ダメだわ……夫だなんて想像しただけで身震いしそうよ。
まだそんなこと決まってないのにっ!!
うーー、馬車がどんどん近づいてきている。
大丈夫かしら、大丈夫かしら、私……。
大丈夫じゃない!!
とうとう目の前に王子を乗せた馬車が停まってしまったわ。
どうしよう、どうしよう、馬車の扉が開いちゃったわよーー!!
「………。」
うわーーなんてことっ!!
とっても眉目秀麗男だわ……。
この方がカルテア国のアレクシス王子なのね。
うん、もう即刻要注意リスト入りよっ!!
「よくぞ我がウェンスティール国へと来て下さいました。王子アレクシス!! 国王リチャードです」
「リチャード国王陛下、お招きいただき大変有り難く存じます。カルテア国王子アレクシスです」
お父様の熱烈なハグに応えるように眩しいくらいに輝く満面の笑顔だわ……アレクシス王子。
きっとおモテになられるのでしょうね。
「大きくなられましたなーー。覚えていないでしょうが王子がまだ小さい頃に何度か私と妃はお会いしているのですよ」
「はい、父上からも聞いております。またお会い出来て大変光栄でございます」
えっ!?
お父様もお母様もお会いしたことがあったのですか?
「遠路はるばるよくお越し下さいました。王妃のローズです」
「王妃殿下、お会い出来て大変光栄です」
「こちらこそお会い出来て嬉しいですわ。こんなにご立派になられたお姿が見れて」
「いえ、恐縮です」
「お会い出来ることを楽しみにしておりました。お初にお目にかかります。王子ジョセフです!!」
「私もジョセフ王子にお会い出来ることを楽しみにして参りました。歓迎していただき、ありがとうございます」
ーーいよいよ私が挨拶する番がきてしまったわ。
怖気づいてる場合じゃない。
しっかり挨拶くらいしないと!!
「本日アレクシス王子にお会い出来て大変光栄でございます。王女エレノアです」
ふーーー。
なんとか挨拶できたわ。
ほっ。
「エレノア姫、お会い出来て大変嬉しく思います。出迎えていただきありがとうございます」
「い、い、いえ、遠くからお越しいただきありがとうございます」
うわっ、、噛んじゃった!!
「お気遣いありがとうございます。エレノア姫」
私……今絶対に目が泳いでいる……間違いない!!
「堅苦しい挨拶は終わりにしようではないか。アレクシスは長旅でお疲れであろう。お付きの者も皆ゆっくりと身体を休めるといい。ハンス、王子を部屋へと案内してくれ」
「かしこまりました」
ーーなんだか気疲れするわね。
「国王陛下お気遣いありがとうございます」
「何を仰る!! アレクシスは大切な友の大切な息子でもあるのですよ。遠慮は不要!! 必要な物などあればハンスに何でも言いつけるとよい。またディナーの際にゆっくり皆で話すとしましょう」
「はい、お心遣いに感謝します」
「アレクシス王子、部屋へとご案内いたします」
そうしてアレクシス王子は深々と私達に頭を下げて執事のハンスに連れられ部屋へと去っていた。
ーーやれやれだわね。
ようやくまともに息ができてる気がする。
「エレノア、アレクシス王子はなかなか良い方そうであったな。それに見栄えも申し分ない!! 兄はひとまず安心したぞっ!!」
私の肩を抱きながら何故かご満悦気味なお兄様。
お兄様……王子は先程私の要注意リストの仲間入りをしたところです。
あの容姿の王子だもの……きっと結婚なんてしたら不貞三昧されて私の男性不信をもっと悪化させられに違いない。
これ以上悪化させてどうするのっ!!
なんとしてでもこの縁談を王子の方から断ってもらえるように作戦を練らなきゃだわ!!