ーー私は知ってしまった……。
エレノア姫と二人でスカイミラー湖の水面に顔を覗き込んだ時……水面にはエレノア姫の顔がカボチャではなく真実のエレノア姫の顔が鮮明に映し出されていた。
隣にいるエレノア姫の顔は何度見てもカボチャのままだというのに……水面に映し出された顔は瞳の色までも鮮明に映し出されていたのだ。
ーー今日の澄んだ青空のように美しい青色の瞳。
長い睫毛に、鼻筋は通り、ぷっくりとした唇……。
光輝くプラチナブロンドの髪がその顔立ちの美しさを更に引き立てている。
私は水面に映し出されたエレノア姫の顔から思わず視線を逸らすことができずにいた。
ーー今にも心臓が破裂するのではないかと思うほどに鼓動が速くなるのが分かった。
ーーあんなに挙動不審になってしまい、私は変な男だと思われただろうか。
嫌われてはいないだろうか……?
なんだ……この気持ちは……?
今までこんな気持ちになったことがない。
エレノア姫が初めてだ……。
だが、こうなる予感は既にあった。
突拍子もないエレノア姫の言動に興味が湧き何か引き寄せられるものを感じつつあったからだ。
女性不信のこの私が……女性に興味を持つことができたのだ。
何よりもそんなことを忘れてしまうほどにエレノア姫と過ごす時間は楽しいものであった。
ーーもっとエレノア姫のことを知りたい。
ーーもっと一緒に過ごしたい。
ーーエレノア姫の顔を見てみたい!!
あの時、私は確かにそう思いながら水面を覗き込んでいた。
すると真実のエレノア姫の顔が映っていた。
その水面に映る美しい姫には全く気取ったところが一切なく、自由で、無邪気で、何より自分のことを私の前でよく見せようとしない姿に惹かれてしまう。
今日だって城外に出るためだったにしろ、この国の姫とは誰もが気づくはずもないくらいに一切飾り気も無く、民よりも地味な装いで私の前に現れてみせた。
正直あの姿で私の前に現れたことに意表を突かれた。
今まで多くの令嬢達が美しさを競い合うようにして煌びやかな装いをして私の目の前に姿を見せたが美しいと思ったことなど一度もない。
誰がどれだけ飾り立てようが、今日の彼女の飾らない美しさには誰も敵わないと断言できる!!
ーーこれは……これは……この気持ちは……なんだっ?