食卓に並ぶ彼の作った朝食には目もくれず着替えて靴を履き、玄関の扉を開ける。




「あ、待って香奈子! いってらっしゃい」



聞こえなかったふりをして外に走り出す。




背後で玄関の扉が、勢いに任せて二人を隔てるように閉まる音が響いた。




一歩、また一歩と足を踏み出す度に重荷が心に積み重なり呼吸が苦しくなる。




どうして彼は毎日私の気持ちも知らずに話しかけてくるの?




どうして深く、消えない痛みを残すの?




もうやめてよ……