「香奈子。誕生日おめでとう。はい、プレゼント」




満面の笑みで、そうするのが当然かのようにプレゼントを渡してくる彼。




普通なら彼氏から誕生日を祝ってもらったら嬉しいと思うはずなのに、私は素直に喜べなかった。




最近はいつもそう。




彼が何をしてきても、どんな言葉を並べてきても、もう彼に対して嬉しいという感情を抱けなくなっていた。




正直異常だと思う。




あんなに好きだと言っていたのに。




「いらない。あんたから貰ったって嬉しくないから」




「でも……ほら、香奈子が欲しいって言っていたネックレスだよ?」




「私はあんたからのプレゼントなんていらないの!」




「待てよ。せっかく買ったんだから受け取ってよ」




強引に伸びてきた手を振り払う。




その勢いのまま彼の腕が鈍い音を立てて側にあった机にぶつかる。




痛いはずなのにそれを表情に出さずにこっちを見つめてくる彼に気づかないふりをして、自室へと足を向ける。




背後から寂しげな声が聞こえてきたが私は止まることなく歩き出す。




小さく啜り泣く声を扉を閉める音でそっと掻き消した。