❆知らないままで ーSide 香奈子ー❆





















私は香奈子。




もともと病気持ちだったお母さんは私を産んですぐに亡くなったらしく、男手一つで育ててくれた。




今日は中学校の卒業式の日。




お父さんは学校の先生でちょうど自分の学校の卒業式と被っているから来られないらしい。




でも大丈夫。




ここまで一人で育ててくれた。




他の子と同じように不自由なく育ててくれた。




どんな我が儘も聞いてくれたし、ほしいものだって買ってくれた。




私はお母さんがいないことを寂しく思うことはあってもほしいと思ったことはない。




お父さんがお母さんの分も私を愛してくれているから。




それに、私の名前はお母さんと一緒らしい。




お母さんの分も生きてほしいというお父さんの願いが込められている。




だから私は笑って生きなくちゃいけない。




それがお父さんとお母さんの願いだから。