程なくして、担当医が手術室から出てくる。




二度目のシチュエーションだけど、当然慣れることなんかなくて。




「香奈子は? 赤ちゃん? 無事なんですか?」




掴みかかるかのような勢いで医者に問い詰める。




医者は手術室から出たら俺がどんな行動に出るか分かっていたように冷静に俺の腕を引き剥がしながら言った。




「赤ちゃんは無事です」






赤ちゃん"は"。




そのたった一文字が絶望へと突き落とす。




香奈子は?




死んだのか?




生きていないのか?




止めようとする医者を振り払って手術室へ入る。




手術台の上で目を閉じた香奈子が横になっている。




「おいっ! 香奈子! 返事しろよ!」




香奈子に手を伸ばそうとしたところで気づく。




お腹の動きがゆっくりすぎる。




でも寝ているときとは明らかに違う。




「か……香奈子?」




「残念ですが、香奈子さんは……」




後ろから冷酷な声が聞こえてくる。




「ふざけるな! 医者なら香奈子のこと生かせられるんじゃねぇーのかよ!」




「医者だって人間ですから。同じ人間の生命は操れません。それと、産婦人科は常に人の生命が行き来しているところです。今の香奈子さんは何かしても変わりません。下手に何かするよりもこのままそっとしてあげた方が香奈子さん自身も楽です」




「なんだよ、それ!」




ただただ冷静な医者の態度に怒りが湧いてくる。




握りしめた拳に力を込めたところで、香奈子の声が聞こえた気がした。




告白したときに言われた言葉だ。