彼女は着ている衣服のポケットから透明な液体の詰まった小瓶を取り出し、おれに手渡した。


「まず、これを飲みなさい」
「なんですか、これ」
「いいから飲みなさい。夢を叶えたいんでしょう?」


小瓶の蓋を引き抜き、中に詰まっている謎の液体を飲んだ。

少し苦みがあったが、飲み込めないほど不味くはなかった。


「それで、これって結局何なんですか?」
「転移魔法の薬よ」


薬で転移するなんて、そんなこと本には書かれていなかった。

と、考えた刹那。

目の前の景色が蜃気楼みたく揺れ曲がり、全身の力がみるみるうちに抜け落ちる。

立っていることが難しくなった。


「な、んだ、これ……?気分が……」


平衡感覚を失い、ふらふらと揺れる。

女が優しく抱きとめた。


「大丈夫、心配しないで」
「うう……」


強烈な眠気に襲われ、両目を閉じた。

そして彼女の肩に顎をのせたまま、ゆっくりと眠りに落ちていた。