結局は何も言えないまま、自分の手の甲に貼られた絆創膏を見つめた。


「これからどこかへ向かう途中だったんですか?」

突然彼女から話し掛けられて、思わず冬翔は方をビクリと震わせて小さく頷いた。
こんな自分が情けないと思いつつ、それでも変わる勇気もなく毎日家でぼんやりと過ごす毎日。


……もし、僕に変わる勇気があれば……。


「あっ…近くのスーパーへ…。えっと、食料と…あと、チョコレートを買いに…行きます…」


「甘いものお好きなんですか?」


彼女の言葉に顔が赤くなり、冬翔はまた俯いてしまう。
甘いものは確かに好きだが、その事を伝えるのが恥ずかしくて言葉に出せない。



「私も好きなんですよ〜!知ってます?駅前に新しくカフェが出来たんですよ。そこのチョコレートパフェが凄くおいしいんです」


「チョコレート……パフェ」

自然と口に出していた。
興味はあるが、到底1人では行けそうにない。
だからと言って一緒に行ける友人もいない。
その現実が悲しくて冬翔は俯いたまま顔を上げる事が出来なかった。



「あの…。もし良かったら、一緒に行きませんか?。怪我をさせてしまったお礼もしたいですし。ダメでしょうか?」



突然の提案に冬翔は跳ね上がるように顔を上げて彼女の顔を見た。
淡い栗色のロングヘアが、秋の風に吹かれてさらさらと揺れている。


「あっ、いや…ダメ、ではないですけど…。えっと…でも、僕なんかと一緒でも…多分、楽しくないだろうし…」


自分の言葉が棘のように胸に刺さる。
その痛みを堪えるようにして、冬翔は顔を少し下に向けた。